ジャッジが言うのなら…
2007年3月8日今回は、読者様からお手紙を頂きましたのでご紹介。
メールがくるというのは嬉しいものですねー。
はー、なるほど。
これは確かに困った問題です。
最初メールをさらっと読んだときには「なんでウチになんだろ?」と思ったんですよ。ネットにはジャッジやトーナメント運営の方のサイトもたくさんありますし、そういう人たちに聞いたほうがそういうトーナメント運営上のルール的に正確な答えが得られるんじゃないかな、と。
でもよく読んでみると、このメールを下さった方(以下:Aさん)が憤っているのは「ミス・ジャッジ」では無い様子。一番のポイントは「試合続行を強要」……つまり「よく話を理解してもらえなかった」そして「最後まで(正確な状況を)説明をさせてもらえなかった」点であるようです。
なるほど、これは関係者(もしくは関係者と交流があるかもしれない人)には相談しづらい。
納得です。
あ、ちなみにAさんにはすでにメールのお返事を出し、DCIのネットワークマネージャーのAndrew氏のメアドと、トーナメントでのジャッジングのレビューを出せる judge.wizards.com を紹介しておきました。なので今回はそのあたりは割愛し、主に「ジャッジング」についてお話させていただきます。
なお judge.wizards.com は「トーナメントの場所、期日、ジャッジの情報」を入力し、そのトーナメントおよびジャッジングで得た感想を提出できる公式のフォームです。人間性に問題のあるジャッジ、不公平な運営をするトーナメントがありましたらどしどしチクると良いです。(ま、でもジャッジも人間ですので、些細なミスジャッジ程度の報告は多めに見てあげましょう。ジャッジは基本的にボランティアな存在ですので、ジャッジ狩りになるような風潮になるのは好ましくありませんよ)
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さて、本題。
まず最初に基本中の基本ですが、明らかに間違っている裁定でありましても、ヘッドジャッジがそうと言えばそれが「正しい」ものとなります。
「ヘッドジャッジが言ったのであれば、それが正しい」のではありません。
「ヘッドジャッジが言ったことが『正しい』ことになる」のです。
それが本当に正しい・正しくないは、実は二の次です。
ヘッドジャッジが「そう」と決めたのなら、そのトーナメント中はそれが正しいものになるのです。
ですので、そのトーナメント内に限って言えば、ヘッドジャッジが言ったことに対して「それは間違っている」というのは完全にナンセンスです。
極論を言えば、ヘッドジャッジはルールを捻じ曲げる権限すらも持っています。
もちろんソレがあまりにもルールを逸脱していることでありましたら「ジャッジ資格の剥奪」などのペナルティもありますが、しかし事実として「ルールを捻じ曲げる」ことが認められています。
過去にあった実例を例としてあげますと、ウルザズ・サーガ時期に、置換ルールの不備により1枚のDark Ritualを無限に使えるという事できてしまった時期があるのですが、その時ソレがマジックのルールの上では完全に適正であったにもかかわらず、ジャッジがそれを禁止したという事例があります。(詳しくは近日中に別エントリーでご紹介する予定)
その時、そのデッキの使用者が「But, the rule say... rule say...(でもルールでは…ルールでは…)」となおも食い下がったところににジャッジが言ったセリフが、今日でもジャッジの名言として残っている「I AM A RULE.(オレが、ルールだ)」です。
さて、そろそろ本題に戻ります。
ジャッジングに関して言えば、ジャッジは公平に裁定を下す義務がありますが、同様にプレイヤーにはジャッジに正しく説明をする義務があります。ですので、もし言語ニュアンスなどの違いにより、ヘッドジャッジが「誤った現状認識」や「勘違い」をしてしまうことがあるのでしたら……その責任は、残念ながらプレイヤーとなってしまいます。大変納得はいかないと思います。ただ、やはりどちらに責任があるのかと言えば、「プレイヤー側」となるでしょう。
極論を言えば、ジャッジには全言語を理解する義務はありません。しかしプレイヤーには日本語通訳を呼ぶ権利(世界選手権レベルなら随時通訳がおります)がありますので、その通訳を交えての交渉であれば、言語という壁は取り除かれることになります。
プレイヤーには通訳を呼ぶ権利(PTレベルの大会には常に通訳がおりますので)があり、その通訳を通して抗議したのであればそれは英語圏の人間同士の話し合いと同じに扱って考えるべきであると思われます。もしそれでも状況がうまく伝えられないのであれば、それはヘッドジャッジの問題ではなく、通訳とプレイヤー側のコミュニケーション・ミスとすべきであるでしょう。ヘッドジャッジのすべき仕事は、プレイヤーから得た情報をもとに判断を下すことであり、もし「状況が正確に伝えられなかった」プレイヤーが不利益を被ったのなら、その責任はヘッドジャッジにはないと私は思います。
問題は「ヘッドジャッジが話を最後まで聞いてくれなかった」場合。
これは大変難しいと思います。
ヘッドジャッジにはプレイヤーからの話を聞く義務はありますが、その話をどこまで聞き続けるかという判断は、そのヘッドジャッジ個人の裁量にゆだねられます。プレイヤーの話を「正しい状況をより正確に伝えようと努力している」と見るか、「不利益を被りそうになったプレイヤーの言い訳」と見るかによって結果は大きく異なるでしょうし、そうなりますとそのトーナメントの場所での公用語(主に英語)を話せるプレイヤーのほうが有利となる可能性は高いでしょう。私自身も経験がありますが、不慣れな言語をたどたどしく話す人間は、非常に「自信がなく」写ってしまいます。
自信満々に状況を完全に説明する1プレイヤーと、その状況を表すのに適切ではない単語を用いながら状況を説明するプレイヤー(もしくは通訳を通して「この方はこういうことを言いたいようです」と伝えられる状況)の2つの状況描写が食い違っている場合では、ジャッジがどちらを「正確」と判断するかは……なんとも言えません。
なにより、もしそのような「2人のプレイヤーの話す状況が食い違っている」場合……例えば、各種の宣言等で「言った・言わない」の争いとなったとき、正確にその単語(例えば「戦闘ダメージをスタックに乗せる」など)を発音できないプレイヤーの側が「正確に言っていなかった」とされる可能性すらあります。マジックがコミュニケーションのゲームである以上、このようなミス・コミュニケーションでの争いは、マジックの公用語である「英語」を話せないプレイヤーに対しては、不利になることはあっても、有利に働くことは無いと思います。
最後に。
ジャッジはその仕事柄、嫌われ役となりやすいです。
人間なのでミスもしますが、その些細なミス1つで大変責められるという、とても難儀なオシゴトです。
ま、ジャッジが正確でないとゲームがゲームでなくなってしまうので仕方ないと言えば仕方ないのですが、それでもそのプレッシャーとストレスは相当なものがあると思われます。
本当にダメなジャッジ(…例えば、不公平な裁定を出す、最新のルールを勉強しようともしてない、感情的になりやすく話になんない等)は追放されてしかるべきです。でも、間違いを繰り返しながらもがんばって成長しようとしているジャッジさんは、どうか暖かく見守ってあげてください。
ミスジャッジなどのダメ出しがあれば、それを陰で非難するだけでなく、本人に直接話してあげましょうよ。
マジックはコミュニケーションのゲームなんですから。
メールがくるというのは嬉しいものですねー。
いつも楽しく読ませていただいています。
突然失礼します。
今日は一つマジックについてお伺いしたいことがありメールした次第なのですが、マジックの大きな大会でヘッドジャッジも含めて明らかに誤った裁定を下された場合、その苦情もしくは質問はどこへするべきなのでしょうか?
言語のニュアンスの違いから明らかに裁定が誤っているにも関わらず試合続行を強要された場合などです。日本国内では如何ともしようがありませんが、もしもよい手段などご存知であれば教えていただけると幸いです。
用件だけですが失礼します。
これからも楽しみにしております。
はー、なるほど。
これは確かに困った問題です。
最初メールをさらっと読んだときには「なんでウチになんだろ?」と思ったんですよ。ネットにはジャッジやトーナメント運営の方のサイトもたくさんありますし、そういう人たちに聞いたほうがそういうトーナメント運営上のルール的に正確な答えが得られるんじゃないかな、と。
でもよく読んでみると、このメールを下さった方(以下:Aさん)が憤っているのは「ミス・ジャッジ」では無い様子。一番のポイントは「試合続行を強要」……つまり「よく話を理解してもらえなかった」そして「最後まで(正確な状況を)説明をさせてもらえなかった」点であるようです。
なるほど、これは関係者(もしくは関係者と交流があるかもしれない人)には相談しづらい。
納得です。
あ、ちなみにAさんにはすでにメールのお返事を出し、DCIのネットワークマネージャーのAndrew氏のメアドと、トーナメントでのジャッジングのレビューを出せる judge.wizards.com を紹介しておきました。なので今回はそのあたりは割愛し、主に「ジャッジング」についてお話させていただきます。
なお judge.wizards.com は「トーナメントの場所、期日、ジャッジの情報」を入力し、そのトーナメントおよびジャッジングで得た感想を提出できる公式のフォームです。人間性に問題のあるジャッジ、不公平な運営をするトーナメントがありましたらどしどしチクると良いです。(ま、でもジャッジも人間ですので、些細なミスジャッジ程度の報告は多めに見てあげましょう。ジャッジは基本的にボランティアな存在ですので、ジャッジ狩りになるような風潮になるのは好ましくありませんよ)
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さて、本題。
まず最初に基本中の基本ですが、明らかに間違っている裁定でありましても、ヘッドジャッジがそうと言えばそれが「正しい」ものとなります。
「ヘッドジャッジが言ったのであれば、それが正しい」のではありません。
「ヘッドジャッジが言ったことが『正しい』ことになる」のです。
それが本当に正しい・正しくないは、実は二の次です。
ヘッドジャッジが「そう」と決めたのなら、そのトーナメント中はそれが正しいものになるのです。
ですので、そのトーナメント内に限って言えば、ヘッドジャッジが言ったことに対して「それは間違っている」というのは完全にナンセンスです。
極論を言えば、ヘッドジャッジはルールを捻じ曲げる権限すらも持っています。
もちろんソレがあまりにもルールを逸脱していることでありましたら「ジャッジ資格の剥奪」などのペナルティもありますが、しかし事実として「ルールを捻じ曲げる」ことが認められています。
過去にあった実例を例としてあげますと、ウルザズ・サーガ時期に、置換ルールの不備により1枚のDark Ritualを無限に使えるという事できてしまった時期があるのですが、その時ソレがマジックのルールの上では完全に適正であったにもかかわらず、ジャッジがそれを禁止したという事例があります。(詳しくは近日中に別エントリーでご紹介する予定)
その時、そのデッキの使用者が「But, the rule say... rule say...(でもルールでは…ルールでは…)」となおも食い下がったところににジャッジが言ったセリフが、今日でもジャッジの名言として残っている「I AM A RULE.(オレが、ルールだ)」です。
さて、そろそろ本題に戻ります。
ジャッジングに関して言えば、ジャッジは公平に裁定を下す義務がありますが、同様にプレイヤーにはジャッジに正しく説明をする義務があります。ですので、もし言語ニュアンスなどの違いにより、ヘッドジャッジが「誤った現状認識」や「勘違い」をしてしまうことがあるのでしたら……その責任は、残念ながらプレイヤーとなってしまいます。大変納得はいかないと思います。ただ、やはりどちらに責任があるのかと言えば、「プレイヤー側」となるでしょう。
極論を言えば、ジャッジには全言語を理解する義務はありません。しかしプレイヤーには日本語通訳を呼ぶ権利(世界選手権レベルなら随時通訳がおります)がありますので、その通訳を交えての交渉であれば、言語という壁は取り除かれることになります。
プレイヤーには通訳を呼ぶ権利(PTレベルの大会には常に通訳がおりますので)があり、その通訳を通して抗議したのであればそれは英語圏の人間同士の話し合いと同じに扱って考えるべきであると思われます。もしそれでも状況がうまく伝えられないのであれば、それはヘッドジャッジの問題ではなく、通訳とプレイヤー側のコミュニケーション・ミスとすべきであるでしょう。ヘッドジャッジのすべき仕事は、プレイヤーから得た情報をもとに判断を下すことであり、もし「状況が正確に伝えられなかった」プレイヤーが不利益を被ったのなら、その責任はヘッドジャッジにはないと私は思います。
問題は「ヘッドジャッジが話を最後まで聞いてくれなかった」場合。
これは大変難しいと思います。
ヘッドジャッジにはプレイヤーからの話を聞く義務はありますが、その話をどこまで聞き続けるかという判断は、そのヘッドジャッジ個人の裁量にゆだねられます。プレイヤーの話を「正しい状況をより正確に伝えようと努力している」と見るか、「不利益を被りそうになったプレイヤーの言い訳」と見るかによって結果は大きく異なるでしょうし、そうなりますとそのトーナメントの場所での公用語(主に英語)を話せるプレイヤーのほうが有利となる可能性は高いでしょう。私自身も経験がありますが、不慣れな言語をたどたどしく話す人間は、非常に「自信がなく」写ってしまいます。
自信満々に状況を完全に説明する1プレイヤーと、その状況を表すのに適切ではない単語を用いながら状況を説明するプレイヤー(もしくは通訳を通して「この方はこういうことを言いたいようです」と伝えられる状況)の2つの状況描写が食い違っている場合では、ジャッジがどちらを「正確」と判断するかは……なんとも言えません。
なにより、もしそのような「2人のプレイヤーの話す状況が食い違っている」場合……例えば、各種の宣言等で「言った・言わない」の争いとなったとき、正確にその単語(例えば「戦闘ダメージをスタックに乗せる」など)を発音できないプレイヤーの側が「正確に言っていなかった」とされる可能性すらあります。マジックがコミュニケーションのゲームである以上、このようなミス・コミュニケーションでの争いは、マジックの公用語である「英語」を話せないプレイヤーに対しては、不利になることはあっても、有利に働くことは無いと思います。
最後に。
ジャッジはその仕事柄、嫌われ役となりやすいです。
人間なのでミスもしますが、その些細なミス1つで大変責められるという、とても難儀なオシゴトです。
ま、ジャッジが正確でないとゲームがゲームでなくなってしまうので仕方ないと言えば仕方ないのですが、それでもそのプレッシャーとストレスは相当なものがあると思われます。
本当にダメなジャッジ(…例えば、不公平な裁定を出す、最新のルールを勉強しようともしてない、感情的になりやすく話になんない等)は追放されてしかるべきです。でも、間違いを繰り返しながらもがんばって成長しようとしているジャッジさんは、どうか暖かく見守ってあげてください。
ミスジャッジなどのダメ出しがあれば、それを陰で非難するだけでなく、本人に直接話してあげましょうよ。
マジックはコミュニケーションのゲームなんですから。
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