同人セットとトークン: その1
2007年3月14日コメント (2)
今回ご紹介しますのは、Wizards of the Coast(以下、いつもに習ってWoC)に「褒賞トークンカード」を作らせる原因ともなったと言われる、日本国内よりも海外での人気が凄まじい「Minagishi Token」です。
このトークンカードはいわゆるタダの同人モノであり、言ってしまえばマジックオタクの趣味のアイテムです。しかしながら、このトークンカードがマジックの世界に与えた影響は決して小さくありません。
なにせ、WoC社にオフィシャルのトークンカードを作らせる一因となったのもそうですが、また同時に同社に「マジックの版権を無断使用した同人モノ」を取り締まらせる一因ともなりましたから。
それほどの影響を与えるほど、この同人トークンの人気は大きかったワケです。
でも、このトークンを紹介する理由はそれだけではありません。
このCrazy Clownsのトークンシリーズは、「どのようにすれば、WoC社の著作権に引っかからずに同人モノを作れるか」という、製作者の涙ぐましい努力の履歴でもあるのです。
Crazy Clownsトークンの製作者……ここは仮にAさんとしましょうか。
あ、でもアメリカでは身元不明人や姓名不詳のナナシさんのことをJohn Doe(女性の場合はJane Doe)と表記しますので、ここはアメリカ流に則り「Jさん」としましょう。このへん、事情を何も知らない方と、逆にものすごく知ってる方の両方から「どっちでもいい」と言われそうですね。うへぇ。
もしこれから、マジックの同人セットや同人トークンなどを作りたいと考えているチャレンジャーな方がおりましたら、まずは今回の記事を熟読することをオススメします。その上で、もしこのJさんがやったものと同じ、もしくはそれ以上の努力ができると思うのなら、どーぞトライしてみてください。けっこうキツいっすよ。
ではまず、いつものように基本知識から。
このトークンカードが世に出始めたのは1997年の12月。
ま、日付まで言っちゃいますと29日です。わかる人にはわかるあの日ですね。
マジックのオリジナル・セットやオリジナル・トークンという、まぁいわゆる「同人モノ」は、マジックが日本に入り始めたころからありますので、決してこのCrazy Clownsトークンが「最初に出回ったトークン」ではありません。ただ、当時広まっていた殆どの同人モノが、カラーコピー、よくてパソコンの昇華型プリンタというチャチなものであったのに対し、Crazy Clownsはオフセット印刷で高品質なトークンを製作していたため、瞬く間に人気が広がりました。
また当時の同人モノは、他の版権モノのイラストなどをそのまま使っているのが大半を占めていたのですが(サクラ対戦とかスタートレックとか、それはそれはイヤなレベルで多彩でした)、Crazy Clownsはオリジナルのイラストレーターを起用し、またカードに使うフォントも限りなく本物に近いものを使用し、更にはフレイバーテキストまで英文で入れるといった懲りようでしたので、そりゃ人気もでるってものです。
なお、海外では「Minagishi Token」と呼ばれることの多いこのトークンですが、この由来はイラストレーターの「みなぎし順」氏の名前です。Crazy Clownsの第一期作から現在まで、唯一継続してイラストを描き続けているアーティストで、その名前がカードのアーティスト部分に「Illus. Jun Minagishi」と書かれていたため、呼称がわからなかったこのスペシャルなトークンに対し便宜的に呼ばれるようになったようです。
なお蛇足ですが、Crazy Clownsの第一期作には、実はイラストレーター表記はありません。
またカードバックも真っ白となっています。このヘンが「アーティストプルーフだ」とか「エラーカードだ」とか言われたりするのですから、まあ世も末。
んじゃ、つまんない長話も続いたことですし、そろそろ本題。
各部分について、ドコが問題であって、それがどう変化して行ったかを見てみることにします。
(なおカード画像はココにたくさん載ってますので、見比べながら読み進めるといいと思うの。)
http://www.magiclibrary.net/rarities-crazy-clowns-7th-series-1.html
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■イラスト
最大の特徴にして、Crazy Clownsトークンをここまで有名にした立役者です。
イラストは完全にオリジナルのアーティストを使用し、あくまでも「そのトークンのイメージ」に従ったイラストを描き起こしてます。もしここで、マジックの特定のカードのイラストに似せたりするとアウトですのでご注意を。
初期のものはあっさりとしたアニメ調のものが多かったのですが、後期になるにつれて美麗なものも増えてきました。初期のものの彩色はコピック、後期のものはCGが多いようです。
■フォント
初期のものはマジックとほぼ同じモノのように見えますが、100%同じではなさそうです。
まぁ、これについては、そのフォントを製作した人間が「マジック」のカードからパクったのでは無い限り、セーフだと思います。似たようなフォントを使っちゃダメ、なんてことはなかろうかと。
■カードデザイン
初期のモノはマジックの第7版までの、いわゆる旧タイプの枠をそのまま使用しています。当然アウトです。著作権……いや、これは意匠権かな? どちらにしても、マジックの枠やデザインをそのまま使うと間違いなくアウトとなります。Crazy Clownsの初期のモノはカード枠の背景(以前に紹介したポータル4では涙ぐましく変更されてましたね)までマジックのものを流用してましたので、それはもう楽しいほどに100%アウト確定です。
中期のモノは、デザインもオリジナルのものに変更されています。
見た目は、褒賞カードのテキスト無しカードに似てるような印象。でもたぶんこっちのほうが褒賞カードが出るよりも前に作られたんじゃないかな? 製作2003年だし。
後期になると、更にデザインが変わってます。
中期との一番大きな違いは、テキスト枠ができたというところ。これによりフレイバーテキストも復活しています。意外と人気があるんですよね、この英語フレイバー。
ちなみにこの「カードデザイン」でアウトになる「マジック風のカード」は以外に多いです。
某ショップで配布してた「Fireball Token」という名称のトークン(店名は言ってませんですハイ)も、これで大アウトでした。販売はせずに無料配布だからお目こぼしだったようですが、あとからデザイン変わってましたね。あと某未来Beeや某マナ素のショップ会員証も限りなくアウトに近かったです。その後でデザイン変わったのかな、あれ。
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書き始めたら、イヤんなるほど長くなっちゃったので、続きは次回。
読むほうもイヤんなりそうな文章量だ。
このトークンカードはいわゆるタダの同人モノであり、言ってしまえばマジックオタクの趣味のアイテムです。しかしながら、このトークンカードがマジックの世界に与えた影響は決して小さくありません。
なにせ、WoC社にオフィシャルのトークンカードを作らせる一因となったのもそうですが、また同時に同社に「マジックの版権を無断使用した同人モノ」を取り締まらせる一因ともなりましたから。
それほどの影響を与えるほど、この同人トークンの人気は大きかったワケです。
でも、このトークンを紹介する理由はそれだけではありません。
このCrazy Clownsのトークンシリーズは、「どのようにすれば、WoC社の著作権に引っかからずに同人モノを作れるか」という、製作者の涙ぐましい努力の履歴でもあるのです。
Crazy Clownsトークンの製作者……ここは仮にAさんとしましょうか。
あ、でもアメリカでは身元不明人や姓名不詳のナナシさんのことをJohn Doe(女性の場合はJane Doe)と表記しますので、ここはアメリカ流に則り「Jさん」としましょう。このへん、事情を何も知らない方と、逆にものすごく知ってる方の両方から「どっちでもいい」と言われそうですね。うへぇ。
もしこれから、マジックの同人セットや同人トークンなどを作りたいと考えているチャレンジャーな方がおりましたら、まずは今回の記事を熟読することをオススメします。その上で、もしこのJさんがやったものと同じ、もしくはそれ以上の努力ができると思うのなら、どーぞトライしてみてください。けっこうキツいっすよ。
ではまず、いつものように基本知識から。
「ミナギシトークン(通称)」
発行 : 1997年
製作 : Crazy Clowns
主なアーティスト:
Jun Minagishi
Aira Namegawa
Keito Matsushita
Hidenori Honda
Risono-Roma
Gyojya-Busyo
Kaosyo-Rochishin
Kumonryu-Shishin
このトークンカードが世に出始めたのは1997年の12月。
ま、日付まで言っちゃいますと29日です。わかる人にはわかるあの日ですね。
マジックのオリジナル・セットやオリジナル・トークンという、まぁいわゆる「同人モノ」は、マジックが日本に入り始めたころからありますので、決してこのCrazy Clownsトークンが「最初に出回ったトークン」ではありません。ただ、当時広まっていた殆どの同人モノが、カラーコピー、よくてパソコンの昇華型プリンタというチャチなものであったのに対し、Crazy Clownsはオフセット印刷で高品質なトークンを製作していたため、瞬く間に人気が広がりました。
また当時の同人モノは、他の版権モノのイラストなどをそのまま使っているのが大半を占めていたのですが(サクラ対戦とかスタートレックとか、それはそれはイヤなレベルで多彩でした)、Crazy Clownsはオリジナルのイラストレーターを起用し、またカードに使うフォントも限りなく本物に近いものを使用し、更にはフレイバーテキストまで英文で入れるといった懲りようでしたので、そりゃ人気もでるってものです。
なお、海外では「Minagishi Token」と呼ばれることの多いこのトークンですが、この由来はイラストレーターの「みなぎし順」氏の名前です。Crazy Clownsの第一期作から現在まで、唯一継続してイラストを描き続けているアーティストで、その名前がカードのアーティスト部分に「Illus. Jun Minagishi」と書かれていたため、呼称がわからなかったこのスペシャルなトークンに対し便宜的に呼ばれるようになったようです。
なお蛇足ですが、Crazy Clownsの第一期作には、実はイラストレーター表記はありません。
またカードバックも真っ白となっています。このヘンが「アーティストプルーフだ」とか「エラーカードだ」とか言われたりするのですから、まあ世も末。
んじゃ、つまんない長話も続いたことですし、そろそろ本題。
各部分について、ドコが問題であって、それがどう変化して行ったかを見てみることにします。
(なおカード画像はココにたくさん載ってますので、見比べながら読み進めるといいと思うの。)
http://www.magiclibrary.net/rarities-crazy-clowns-7th-series-1.html
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■イラスト
最大の特徴にして、Crazy Clownsトークンをここまで有名にした立役者です。
イラストは完全にオリジナルのアーティストを使用し、あくまでも「そのトークンのイメージ」に従ったイラストを描き起こしてます。もしここで、マジックの特定のカードのイラストに似せたりするとアウトですのでご注意を。
初期のものはあっさりとしたアニメ調のものが多かったのですが、後期になるにつれて美麗なものも増えてきました。初期のものの彩色はコピック、後期のものはCGが多いようです。
■フォント
初期のものはマジックとほぼ同じモノのように見えますが、100%同じではなさそうです。
まぁ、これについては、そのフォントを製作した人間が「マジック」のカードからパクったのでは無い限り、セーフだと思います。似たようなフォントを使っちゃダメ、なんてことはなかろうかと。
■カードデザイン
初期のモノはマジックの第7版までの、いわゆる旧タイプの枠をそのまま使用しています。当然アウトです。著作権……いや、これは意匠権かな? どちらにしても、マジックの枠やデザインをそのまま使うと間違いなくアウトとなります。Crazy Clownsの初期のモノはカード枠の背景(以前に紹介したポータル4では涙ぐましく変更されてましたね)までマジックのものを流用してましたので、それはもう楽しいほどに100%アウト確定です。
中期のモノは、デザインもオリジナルのものに変更されています。
見た目は、褒賞カードのテキスト無しカードに似てるような印象。でもたぶんこっちのほうが褒賞カードが出るよりも前に作られたんじゃないかな? 製作2003年だし。
後期になると、更にデザインが変わってます。
中期との一番大きな違いは、テキスト枠ができたというところ。これによりフレイバーテキストも復活しています。意外と人気があるんですよね、この英語フレイバー。
ちなみにこの「カードデザイン」でアウトになる「マジック風のカード」は以外に多いです。
某ショップで配布してた「Fireball Token」という名称のトークン(店名は言ってませんですハイ)も、これで大アウトでした。販売はせずに無料配布だからお目こぼしだったようですが、あとからデザイン変わってましたね。あと某未来Beeや某マナ素のショップ会員証も限りなくアウトに近かったです。その後でデザイン変わったのかな、あれ。
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書き始めたら、イヤんなるほど長くなっちゃったので、続きは次回。
読むほうもイヤんなりそうな文章量だ。
コメント
Crazy Clownsのイラストレーターは、それなりに実力がある人が匿名で参加してるのが多いようですね。個人的には、本日アップした「その2」のトップ画像である「Snake」がお気に入りです。