数回ほどつまらん話が話が続きましたので、今回はちょっと目の引くヤツを。
鑑定機関なんて一般のプレイヤーにはホント縁の無いブツですし。
今回はもうちょっと一般よりのお話。「非公式のカード」。
……十分マニアックかもしれないなあ。
また一般プレイヤー置き去りだあ。
ま、でもですね。
これを書かないとこのブログを書き始めた意味がないと言ってもいいほど、この話は「裏寄り」なんですよ。要するにこれこそが「黒歴史」。あ、いま始めてこのブログで黒歴史って言葉使った気がするや。メインテーマのはずなのに。
まず最初に前提として挙げておかなければならないことから。
「マジックは、サードパーティによるエキスパンションセットの製作を認めていない」。これは絶対なんです。昔から変わらず、また今後も変わることはないでしょう。
それにも関わらず、世の中にはマジックの「オリジナル・エキスパンション」とも呼べるものが数多く出回っています。無論これらは基本的に著作権無視の違法モノであり、その殆どは訴えられたら負けるレベルでしょう。
しかしながら……その中には極僅かではありますが「限りなく公認("公式"ではないことに要注意)に近い」と言えるセットがあります。今回紹介する2つはそんなちょっとヤバめのセット。
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■ミドルエイジ (Middle Ages)
知る人ぞ知る、超有名セット。でも知らない人にはなんのこっちゃな陰のセット。
1994年にFred Ditzler氏によって作られた、総枚数75枚のセットです。発行枚数9万枚。
8枚入りのブースターパック(といってもただの袋ですが)の形で、主にペンシルバニア、デラウェア、ニュージャージーの3つの州で販売されました。
このセット、基本的に同人セットです。
Wizards社からライセンスを受けているわけでもありませんし、いわゆる「マジック」の歴史の中に含まれる類ものでもありません。それにも関わらずに何故これほどまでに「幻のエキスパンション」として一部コレクターに持てはやされているかというと、それはこのセットの発売から発売中止に至るまでの経緯にあります。
そもそもこのセットを作ったFred氏は、このセットがマジックの権利(いわゆる著作権やら意匠権)に触れる可能性があることを最初から危惧しておりました。そのために彼は、まず明らかに意匠権に触れるマナシンボルを全てオリジナルのものに変更し、またカードのレイアウトも若干変更(本来ならカード名があるところに「カードタイプ」、カードタイプがあるところに「カード名」があります。またパワー/タフネスの表記もマナコストの横に移動してます)もしています。
参考までにですが、彼が製作したカードのマナシンボルは以下のようになっています。
黒マナ: 墓石
青マナ: 波
緑マナ: 葉(ヤシの木の葉っぱの部分、という感じでしょうか)
赤マナ: 火炎(『火』ではなく、燃え盛る炎の波)
白マナ: 十字架
さらにFred氏はこのセットの発売に先立って、なんとWizards社に電話確認を行っています。
「これこれこういうファンセットを作りたいと思う。マナシンボルも独自のものを仕様し、カードのデザインもこういう風に変えた。これを作ることは問題となるだろうか?」と、当時のWizards社(カスタマーサービスと思われます)に口頭で説明したのです。そして「それなら問題は無い」という同社からの返事を持って印刷・販売に至りました。
繰り返しますが、彼は電話という手段ではありますが「許可」を得ています。
まぁ、もちろんこれは今となっては確かめる手段もなく、またWizards社も決して認めようとはしないでしょう。その電話で「問題はない」と答えた人物がダレであるかを確かめる手段もなく、またそれがちゃんと責任のとれる立場の人間であったかどうかも不明です。
しかし、彼は「OK」の返事を貰い、それで発売に踏み切りました。
そしてこの先はみなさんもご存知の通り、発売後にこのセットが問題となり、結果としてWizards社から回収・販売の中止要請が下り、このセットは幻と消えました。
彼のミスは、上記の「許可」……(ま、事実は最早確かめようがないので「彼がそう判断したもの」としましょうか)……を『書類』等の後に残るの形で残さなかったことにあります。
ミドルエイジのカードは現在でもコレクター市場では高値で取引されています。
このセット、正確には「カード」ではありません。いわゆるステッカー(シール)です。
現在出回っている多くのカードは、このステッカーを適当なコモン等に貼り付けたものとなっています。ま、当然のように未貼付のステッカーのほうが価値は高いです。
まあでも……またこんな話になってしまい恐縮ですが、未貼付のステッカーの中には「これ、本当に最初に作られたもの?」と疑わしいものも、まぁ無いとは言いません。見分けるのはひたすら困難であり、しかもソレがニセモノであるという根拠もまだ無く、ただただ私が長い間ミドルエイジのカードを見てきた経験から「どうしてこのカードだけがこんなに枚数が多いんだ」と「どうしてこのカードだけ、この部分が他と違うんだ」という2つの引っかかる点があるというダケです。
確信がないので詳しくは述べるのは控えておきます。
ただ、某オークションで「なぜか毎回のように、同じカード内容のミドルエイジの複数枚セット」を出品している某ディーラーからだけは買わないほうがいいかと思う次第であります。
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■エッジ・オブ・ザ・ワールド (Edge of the World)
そらきた、ダレも知らないレベルのセット。
あ、コレクターの間では非常に有名なサイト「Magic Rarities」を普段から愛用している方は「あー、あれか」と気付くかもしれません。でも詳しい内容まで覚えている人はまず居ないでしょう。
それくらい無名。あまりにも無名。ただし、その筋ではとても珍重されている、非常に限定された人間の間だけで有名なセットです。今後のあなたのマジック生活のうえで、知らなくても全く問題ありません。
このセットは1996年に「Manafest(現在のKubra Con)」の会場で配布されたセットです。
製作者はドナルドXさん。ミドルエイジと同様にこのセットもステッカーです。
繰り返しますがセットが配布されたのは1996年……ミドルエイジよりも2年も後です。
当然「ミドルエイジが販売中止となり回収された」ことは有名となっています。しかしそれでも配布されたこのセット……さてさて、どういう事かということを説明いたします。
このセットを作ったドナルドX(これ絶対本名じゃないよな)もWizards社に確認をしています。
そして以下の条件を告げ、製作許可を得ています。
・マナシンボルを使わない(黒マナはB、赤マナはRのように文字になっています)
・カラー印刷ではなく、一目でオフィシャルのものではないと判るよう「白黒印刷」とする
・カードのバックグラウンド(色ごとに違う内枠の部分)もオリジナルのイラストにする
・カードの下部に「これはWizards of the Coast社の製品ではありません」の断り書きを入れる
・トーナメントの賞品として配布するのみとし、販売は一切行わない。
結論から言えば、エッジ・オブ・ザ・ワールドのセットに中止・回収要請は出ておりません。
その意味から言えば、最も「成功」したセットであるとも言えます。
ただし、現在このセットの認知度は非常に低く、かなりヘビーなコレクターでも存在すら知らない人も多いです。一切の販売を行わずにトーナメントでの賞品として配布のみとした結果、まず大多数のプレイヤーはその場で捨てました。わけのわからない、白黒印刷のオリジナルカードに何の価値も見出せなかったのでしょう。
現存するエッジ・オブ・ザ・ワールドのセットは非常に僅かです。
イラストのクオリティもなかなかに高く、カードの内容も非常に独創性に富んだ興味深いセット、そしてなにより「唯一Wizards社に認められたセット」として歴史的価値も高いセットなのですが、もはやこのセットが世間一般のプレイヤーの目に触れることは無いのかもしれません。
以下のサイトに写真がありますので、興味をもたれた方はどうぞ。
http://www.magiclibrary.net/rarities-edge-of-the-world-1.html
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ミドルエイジから12年、エッジ・オブ・ザ・ワールドから10年。
マジックはもはや大きくなりすぎました。
今後このような形で「公認」を得て、オリジナルセットの配布が認められることはまず無いでしょう。
これらのセットが、たとえ電話確認という形であれ「認められた」という事実すら、もはや歴史の彼方に葬られるべきものとなっているのでしょう。
そう考えると、ちょっと寂しい気もします。
鑑定機関なんて一般のプレイヤーにはホント縁の無いブツですし。
今回はもうちょっと一般よりのお話。「非公式のカード」。
……十分マニアックかもしれないなあ。
また一般プレイヤー置き去りだあ。
ま、でもですね。
これを書かないとこのブログを書き始めた意味がないと言ってもいいほど、この話は「裏寄り」なんですよ。要するにこれこそが「黒歴史」。あ、いま始めてこのブログで黒歴史って言葉使った気がするや。メインテーマのはずなのに。
まず最初に前提として挙げておかなければならないことから。
「マジックは、サードパーティによるエキスパンションセットの製作を認めていない」。これは絶対なんです。昔から変わらず、また今後も変わることはないでしょう。
それにも関わらず、世の中にはマジックの「オリジナル・エキスパンション」とも呼べるものが数多く出回っています。無論これらは基本的に著作権無視の違法モノであり、その殆どは訴えられたら負けるレベルでしょう。
しかしながら……その中には極僅かではありますが「限りなく公認("公式"ではないことに要注意)に近い」と言えるセットがあります。今回紹介する2つはそんなちょっとヤバめのセット。
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■ミドルエイジ (Middle Ages)
知る人ぞ知る、超有名セット。でも知らない人にはなんのこっちゃな陰のセット。
1994年にFred Ditzler氏によって作られた、総枚数75枚のセットです。発行枚数9万枚。
8枚入りのブースターパック(といってもただの袋ですが)の形で、主にペンシルバニア、デラウェア、ニュージャージーの3つの州で販売されました。
このセット、基本的に同人セットです。
Wizards社からライセンスを受けているわけでもありませんし、いわゆる「マジック」の歴史の中に含まれる類ものでもありません。それにも関わらずに何故これほどまでに「幻のエキスパンション」として一部コレクターに持てはやされているかというと、それはこのセットの発売から発売中止に至るまでの経緯にあります。
そもそもこのセットを作ったFred氏は、このセットがマジックの権利(いわゆる著作権やら意匠権)に触れる可能性があることを最初から危惧しておりました。そのために彼は、まず明らかに意匠権に触れるマナシンボルを全てオリジナルのものに変更し、またカードのレイアウトも若干変更(本来ならカード名があるところに「カードタイプ」、カードタイプがあるところに「カード名」があります。またパワー/タフネスの表記もマナコストの横に移動してます)もしています。
参考までにですが、彼が製作したカードのマナシンボルは以下のようになっています。
黒マナ: 墓石
青マナ: 波
緑マナ: 葉(ヤシの木の葉っぱの部分、という感じでしょうか)
赤マナ: 火炎(『火』ではなく、燃え盛る炎の波)
白マナ: 十字架
さらにFred氏はこのセットの発売に先立って、なんとWizards社に電話確認を行っています。
「これこれこういうファンセットを作りたいと思う。マナシンボルも独自のものを仕様し、カードのデザインもこういう風に変えた。これを作ることは問題となるだろうか?」と、当時のWizards社(カスタマーサービスと思われます)に口頭で説明したのです。そして「それなら問題は無い」という同社からの返事を持って印刷・販売に至りました。
繰り返しますが、彼は電話という手段ではありますが「許可」を得ています。
まぁ、もちろんこれは今となっては確かめる手段もなく、またWizards社も決して認めようとはしないでしょう。その電話で「問題はない」と答えた人物がダレであるかを確かめる手段もなく、またそれがちゃんと責任のとれる立場の人間であったかどうかも不明です。
しかし、彼は「OK」の返事を貰い、それで発売に踏み切りました。
そしてこの先はみなさんもご存知の通り、発売後にこのセットが問題となり、結果としてWizards社から回収・販売の中止要請が下り、このセットは幻と消えました。
彼のミスは、上記の「許可」……(ま、事実は最早確かめようがないので「彼がそう判断したもの」としましょうか)……を『書類』等の後に残るの形で残さなかったことにあります。
ミドルエイジのカードは現在でもコレクター市場では高値で取引されています。
このセット、正確には「カード」ではありません。いわゆるステッカー(シール)です。
現在出回っている多くのカードは、このステッカーを適当なコモン等に貼り付けたものとなっています。ま、当然のように未貼付のステッカーのほうが価値は高いです。
まあでも……またこんな話になってしまい恐縮ですが、未貼付のステッカーの中には「これ、本当に最初に作られたもの?」と疑わしいものも、まぁ無いとは言いません。見分けるのはひたすら困難であり、しかもソレがニセモノであるという根拠もまだ無く、ただただ私が長い間ミドルエイジのカードを見てきた経験から「どうしてこのカードだけがこんなに枚数が多いんだ」と「どうしてこのカードだけ、この部分が他と違うんだ」という2つの引っかかる点があるというダケです。
確信がないので詳しくは述べるのは控えておきます。
ただ、某オークションで「なぜか毎回のように、同じカード内容のミドルエイジの複数枚セット」を出品している某ディーラーからだけは買わないほうがいいかと思う次第であります。
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■エッジ・オブ・ザ・ワールド (Edge of the World)
そらきた、ダレも知らないレベルのセット。
あ、コレクターの間では非常に有名なサイト「Magic Rarities」を普段から愛用している方は「あー、あれか」と気付くかもしれません。でも詳しい内容まで覚えている人はまず居ないでしょう。
それくらい無名。あまりにも無名。ただし、その筋ではとても珍重されている、非常に限定された人間の間だけで有名なセットです。今後のあなたのマジック生活のうえで、知らなくても全く問題ありません。
このセットは1996年に「Manafest(現在のKubra Con)」の会場で配布されたセットです。
製作者はドナルドXさん。ミドルエイジと同様にこのセットもステッカーです。
繰り返しますがセットが配布されたのは1996年……ミドルエイジよりも2年も後です。
当然「ミドルエイジが販売中止となり回収された」ことは有名となっています。しかしそれでも配布されたこのセット……さてさて、どういう事かということを説明いたします。
このセットを作ったドナルドX(これ絶対本名じゃないよな)もWizards社に確認をしています。
そして以下の条件を告げ、製作許可を得ています。
・マナシンボルを使わない(黒マナはB、赤マナはRのように文字になっています)
・カラー印刷ではなく、一目でオフィシャルのものではないと判るよう「白黒印刷」とする
・カードのバックグラウンド(色ごとに違う内枠の部分)もオリジナルのイラストにする
・カードの下部に「これはWizards of the Coast社の製品ではありません」の断り書きを入れる
・トーナメントの賞品として配布するのみとし、販売は一切行わない。
結論から言えば、エッジ・オブ・ザ・ワールドのセットに中止・回収要請は出ておりません。
その意味から言えば、最も「成功」したセットであるとも言えます。
ただし、現在このセットの認知度は非常に低く、かなりヘビーなコレクターでも存在すら知らない人も多いです。一切の販売を行わずにトーナメントでの賞品として配布のみとした結果、まず大多数のプレイヤーはその場で捨てました。わけのわからない、白黒印刷のオリジナルカードに何の価値も見出せなかったのでしょう。
現存するエッジ・オブ・ザ・ワールドのセットは非常に僅かです。
イラストのクオリティもなかなかに高く、カードの内容も非常に独創性に富んだ興味深いセット、そしてなにより「唯一Wizards社に認められたセット」として歴史的価値も高いセットなのですが、もはやこのセットが世間一般のプレイヤーの目に触れることは無いのかもしれません。
以下のサイトに写真がありますので、興味をもたれた方はどうぞ。
http://www.magiclibrary.net/rarities-edge-of-the-world-1.html
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ミドルエイジから12年、エッジ・オブ・ザ・ワールドから10年。
マジックはもはや大きくなりすぎました。
今後このような形で「公認」を得て、オリジナルセットの配布が認められることはまず無いでしょう。
これらのセットが、たとえ電話確認という形であれ「認められた」という事実すら、もはや歴史の彼方に葬られるべきものとなっているのでしょう。
そう考えると、ちょっと寂しい気もします。
コメント
偽造について殆ど知識が無かったのですが、かなり面白くためになりました。
僕はミラージュ辺りからMTGをやっているのですが、一目で偽造と分かるカードは1回しか目にしていませんが、もしかしたら気付かないだけで、沢山手にしていたのかも知れませんね。。。
そう考えると恐ろしいです。
しかしながら、何故《Onulet(4ED)》なのかは謎ですが…
偽造カードはたまに「なんで?」と言いたくなるようなヘンなカードがありますねw
私が見た中で一番「???」だったのは、ポケモンカードのコモンカードです。しかもカラーコピーとかじゃなくて、きっちりとした印刷モノの偽造。
本格的な偽造の前のテスト、もしくはデッキ丸ごとの偽造でもしたのかなあ?
日本にもありましたよね・・・夏と冬にある大きな同人イベントでMtg好きな人が作ったセット・・・
あんまりにもこの手のネタが懐かしくて書き込んでしまいました。
そういえば、当時一世を風靡した「Crazy Crownトークン(通称:アラジントークン)」ってのもありましたね。日本発で世界中に広まった唯一の同人カードだと思います。この話もいろいろと後日談があるようなので、そのうちちょこっと書こうかな?